幸せな結末

Happy End

レッツ・ゲット・イット・オン

フィル・スペクター・サウンドを特徴付けている要素の一つが、パーカッションの多用である。印象的なカスタネットの連打は、2013年の極東の島におけるウィークリー・チャート・ナンバー・ワン・ヒットの曲でさえ使われるくらいメジャーな手法のひとつだ。パーカッションに注意して音楽を聴くようになってしばらく経つが、今まで何度も聴いてきた曲でも、こういう風にパーカッションが使われていたのかと新鮮な気持ちでもう一度出会うことができているのはしあわせなことに思える。パーカッションを使うと、その曲のポップ度が1.5割増しするような気がする。

最近はマーヴィン・ゲイを軸にソウル/ファンクをよく聴いていて、Mastered for iTunesの『Let's Get It On』ばかり聴いている。このアルバムもパーカッションをうまく使っていて楽しい。そして極上の甘いストリングス。またスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの名盤『暴動』のすごさに気づいた。このモコモコとした音質の、インナーなムードを持ったレコードの異質感は、当時どのように受け止められたのかわからないが、少なくとも今の音楽シーンにも大きな影を落としている。ディアンジェロなんかはもろだろうし、昨今のダウナーなインディーR&Bも元を辿ればスライに行き着くのではないか。リズムボックスを使った時点でヒップホップの源流と見做してしまうのはやや強引かもしれないが、とにかく全く画期的なレコードだったのは確かだ。60年代後半のアメリカの名コンビ、サイモンとガーファンクルのレコードも素敵だ。「冬の散歩道」これがS&Gの曲だったとは。「4月になれば彼女は」これはきっと曽我部恵一「5月になると彼女は」の元ネタだろう。ダスティン・ホフマン主演の映画『卒業』のサントラをいま聴いている。こういった、グラミー賞級の王道なポップスを僕は愛している。


平賀さち枝のファースト・フル・アルバムも大好きなレコードのひとつになった。2010年代の邦楽で最も愛していると言っても過言ではないランタンパレードの『夏の一部始終』と似たような響きを持ったこのレコードは、両手でしっかりと抱きかかえていたいような歌で溢れている。諦めにも似た、あたたかくて、かなしい声。