幸せな結末

Happy End

Can I Kick It?

退屈なアイドル・シーンに風穴を開ける欅坂46がデビューして数日が経ったが、その衝撃は思いの外大きい。iTunesで総合1位をまだキープしている。個人的には、最近3年間で発表された曲の中でトップである。
5曲あるカップリングにも駄作がない。かなり良い曲が3曲(「山手線」「渋谷川」「乗り遅れたバス」)、普通に良い曲が1曲(「手を繋いで帰ろうか」)、普通が1曲(「キミガイナイ」)といった具合だ。「キミガイナイ」、あまりにも説明的すぎるBメロの歌詞には苦笑してしまうものの、メロディーは結構ユニーク。「手を繋いで帰ろうか」秋元康というおっさんからこのようなラブリーで多幸感溢れる歌詞が出てくることは色んな意味で尊敬できる。しかし彼の中にあるオシャレワードの少なさは相変わらずだ。乃木坂46に大貢献しているAkira Sunsetの作曲だが、早口になりがちな、言葉を詰め込むようなメロディーからそろそろ脱却した方がいいのでは。底が見えてきている。長濱ねるをフィーチャーした「乗り遅れたバス」は90年代の古き良きJ-POPを思い出させる。ユニット曲だがサビでソロになる曲なんて、秋元P系では聴いたことがない。舌足らずなねるの声は特徴的で、透明感のある他のメンバーの声質と全く違っていてそのギャップが面白い。「山手線」は薬師丸ひろ子の「セーラー服と機関銃」を意識したような昭和歌謡のスタンダードといったイメージで、歌詞も含めて完成度が高い。そしてフォーク・ソング「渋谷川」。名曲と呼ぶに何の躊躇いもない。この2曲で7インチを切るべきだ。間違いなく売れる。

乃木坂の運営で培ったノウハウを総動員した、ソニーの本気がこれだ。しかしながら、乃木坂のことを考えると複雑ではある。当然、伸び代では欅坂が圧倒的で、これからファンを増やすためにいい曲が妹たちに流れていくことは、ビジネス的に考えても致し方無い。乃木坂のメンバーが欅坂のデビューに際してほとんど触れていないことが逆にメンバーの不安感、焦燥感を表しているように思う(特に、結成後すぐはよく話題にしてた真夏さん)。こんなすごい曲とMVを見せられたらビビるに決まっている。思えば、初めて乃木坂は追う立場から追われる立場になったのだな。そう、欅坂は乃木坂のカウンターである。乃木坂はどう転んでもドブ川に入ってジャケットは撮らない。裏を返せば、乃木坂も欅坂のカウンターとして迎え撃つということが求められる。そういう意味で15thは重要だ。乃木坂ファンや世間の注目は欅坂に流れているのは間違いない。そんな中で、やっぱ乃木坂すごいねって思わせられるか。「サイレントマジョリティー」の路線で一発かましてほしいね。正直ここ数作は、楽曲もグループとしても全然ワクワクしない。個人個人はすごいけど。とにかくこんなところで簡単に追い抜かれてはいけない。YouTubeの再生回数では、欅坂の方が後に公開されたにも関わらず軽く置き去りにされたけど。乃木坂は静かな負けず嫌いが多いイメージなので、バチバチ感はないと思うが内心かなり燃えているかも知れない。というかそうであってほしい。