幸せな結末

Happy End

リヴォン・ヘルムに捧ぐ

メンバーが揃った時の立ち姿が史上最高にかっこいいザ・バンドが、僕にとって他とは代えがたいバンドの一つになったのはいつ頃だったかを考えてみると、おそらく2年半ぐらい前になる。最初に聴いたのは確か2008年の終わり頃だったから3年以上前だ。その時はロックの名盤と言われていたデビュー・アルバムを買ったのだけど、レッド・ツェッペリンだのキング・クリムゾンだの大仰なハード・ロックにハマっていた自分としては、正直何がいいのか全然わからなかった。とにかく退屈で地味な音楽だなと思っていたわけだ。しかしそうではなかった。ザ・バンドの5人が奏でる、ルーツ・ミュージックへの憧憬と敬意の眼差しに満ちたアメリカン・ロックが、一分の隙もない完璧な音楽だったと気付くには、もう少し時間が必要だった。2009年の夏、僕は福島県と栃木県の県境あたりの山の麓に来ていた。眠りにつこうとしてなんとなくザ・バンドのセカンド・アルバムを聴いたのだが、これが驚くほど身に沁みた。なぜだかはわからない。時間がそうさせたとしか思えない。それから幾度と無くその初期の2枚を聴いた。ブルース、カントリー、フォーク、ソウル、ゴスペルなどが持つ共通する核のようなものを、スタイルではなくアティチュードの部分で表現していたバンドだと思う。そして何と言ってもそのグルーヴだ。音と音の黄金比とでも言うべき、完璧な間。それ以上でもそれ以下もない、と思わせるほどの説得力を持った音。どうしてこんな雰囲気を出せたのだろう?

このバンドに魅了されてから、音楽を聴く耳のレヴェルがひとつ上がったと思う。だから僕は、ザ・バンドに影響を受けたと思われるバンドや人を全面的に信頼している。「わかる人」なんだと思うから。それはまぁ言ってしまえば偏見なのだけれど。
きっとこれからも、ザ・バンドの奏でた音楽を、風に揺れる花や、夕陽や、駅前から続く道に、見つけていくことになるだろう。