幸せな結末

Happy End

羽根の記憶

その日は幸いにも、ニュースなどではなく、彼女がそっと上げたブログを見て知ることが出来た。iPhoneでブログタイトルを見て、微かに心に暗いものが立ち込め、開いた瞬間ブラックアウトした。スクロールするのだけど、頭は真っ白だから何一つ読むことが出来ない。とりあえず閉じて、レオス・カラックスの傑作映画『ポンヌフの恋人』の続きを観ていたのだけれど、内容が頭に入ってこない。パソコンの画面にはいつも通りツイッターのホーム画面が映しだされている。だがタイムラインにもトレンドワードにもその情報はない。

何かの間違いじゃないだろうかと、本気で信じていた。
現実感が全く無かった。

しかしその数分後、「まいまい卒業」の文字がトレンドに上がってきた。

多くの人が言うように、深川麻衣はずっと乃木坂にいてくれるものと思っていた。そういう、根拠の無い安心感が、彼女にはあった。いろんな類の「悪い予感」を、全く感じさせない人なのだ。だけど現実は違った。僕らが思っている以上に、彼女はシビアで、挑戦的で、ハングリーだってこと。思い出してみよう、彼女は専門学校を出るも芸能界への夢が諦めきれず上京し、バイトしながらオーディションを受け続けていた泥臭い人なんだってことを。やさしい聖母で居続けるのではなく、泥臭い深川麻衣にもう一度戻ることを選んだ。その一歩を踏み出したことを僕は尊敬するし、尊重したい。

伊藤かりんが、以前「思い出用に」動画を撮っていたまいまいの話を書いていて、彼女の笑顔とか、裏に隠した哀しみとかがいっぺんに想像できてしまい、とても泣けた。

ある意味この卒業は、同じ年長組である白石や橋本が抜けるよりダメージが大きいだろうと予測する。
道しるべではないけれど、いつでも変わらずそこにある、北極星ような存在だったから。
それが失われるのはひどく寂しいし、不安だ。
グループ内の和が乱れないかなんていう、あらぬ心配をしてしまう。(もちろん大丈夫だろうけど。)

だが、だからこそこのグループは次へ進めるのではないだろうか。
さあ、北野日奈子のブログを見るべきだ。彼女の健気さが、なんと頼もしいことよ。
そう、まいまいが与え続けたやさしさは、必ず残されたメンバーひとりひとりに受け継がれていくし、その力がまた乃木坂46を次のステージを押し上げていくのだ。