幸せな結末

Happy End

魔法を信じ続けるかい?

5年前の僕に、いまの僕がこう言ったとしたら、彼は何を思うのだろう。

中村一義が、『金字塔』の再現ライブを、江戸川区でやるよ。」

中村一義が江戸川のほとりで、「永遠なるもの」を弾き語っている姿を勝手に想像し、勝手に泣いていたあの頃。彼の音楽に自分の全霊をぶつけ、涙したあの頃。2012年の『博愛博』をひとつの契機として、彼の音楽を聴く機会は少なくなったものの(代わりに乃木坂46のことを考える時間が増えた)、『金字塔』はいつだって、僕の心のベスト・テン第1位であり続けた。まだ生きている、守り続けているんだっていうその事実を、あの頃の"死ぬように生きていた"自分に、誇りを持って伝えたい。

だけど、あと1週間後に行われるその再現ライブを、本当に僕は見るのだろうか。その実感が湧かない。正直言うと、あまりわくわくしない。なぜか?やはり、『金字塔』は『金字塔』の中でしかあり得ないからだ。『金字塔』の外でそれを再現しようと思っても、まず原理的に不可能なんだ。彼は一体、何を見せたいのだろう。わからない。少しばかり懐疑的な気持ちになっている。いまの自分の価値観や人生観をつくったといっても過言ではない『金字塔』という作品が、あまりにも大切すぎるから、いろいろ考えてしまう。今までライブでやってない曲を本当に出来るのかとか、失望だけが残ってしまうんじゃないかとか、そういうことをね。といっても実際、「始まりとは」のポエトリー・リーディングでいきなり泣いてしまうかもしれないし、酷い出来だったとしても、『金字塔』が人生の一枚であることには変わりないから、どうってことはないだろう。中村一義は2015年を生きていて、2015年の中村一義を見に行くんだ。

アルバムの中核となる「魔法を信じ続けるかい?」という曲に、
「この歌を20年後に聴けば、夢が解る。もうすぐさ。」
という歌詞がある。その「夢」こそが、今回のライブを見れば解るのではないか。
そう思うと、少しわくわくしてきた。

今後の人生観が大きく変わることは無いだろうけれど、大きな意味を持つことは間違いない。