幸せな結末

Happy End

らりるれりん

この2日間、吉澤嘉代子の『魔女図鑑』ばかり聴いている。
完璧な3分間ポップ・ソング集。リリースは去年の6月だが、自分にとっては今この春らんまんの時期に聴くことができてよかった。しばらくして聴き返したらとても感傷的な気分になるのも目に見えている。それすらも楽しみになってる自分がいる。内容は60年代のガールズ・コーラス・グループやドゥー・ワップなどへのあたたかいオマージュに満ちていてプロデューサーの手腕が発揮されているが、ただのポップスに留まらない個性や独自性があるのはアーティスト自身によるものと思う。声の端々に時には松任谷由実椎名林檎橋本絵莉子安藤裕子などの影がちらつき、曲毎にその表情を変える。かといって強烈な個性で突き放す感じもなく、懐かしさをも覚えるいい声だ。これからはプロダクションを選ぶプロデューサーの判断や決断力が重要になるだろう。個人的には今の王道ポップス路線で進んでほしいが、案外彼女の本質は「泣き虫ジュゴン」という曲にある気がする。しっかりプロデュースされてプロモーションもされれば一気に売れる可能性はある。メジャー・デビュー作からのリード・トラック「美少女」は真っ直ぐで輝かしいナイアガラ・ポップスであった。大瀧詠一が生きていたらなんと言っていたかな。

乃木坂46『気づいたら片想い』総評。世界一の丸顔童顔アイドル;伊藤万理華がセンターに立つ8thアンダー楽曲「生まれたままで」は名曲だ。乃木坂46といえば他の流行りのアイドル・ポップと違ってややノスタルジックな音楽性を湛えた楽曲が多く、それがらしさになっていたのだが、このアンダー楽曲は70年代パワー・ポップを下敷きにしながらもあくまでそれが素材にしかなっていなくて、突き抜けたオリジナリティと、それ故のエネルギーを感じる快作。キラキラしたMVもなんか泣けてくるよ。間奏のダンスのまりっか最高。星野みなみも輝いている。天性の可愛らしさの上に凛とした美しさも獲得できている。アンダーにいることで伸び伸びできているのが原因なのだとしたら、運営はいい仕事をした。結果、乃木坂にはタレントが多いので選抜/アンダーという概念を変えざるをえないと気づいてきたようだ。まりっかが「アンダーの概念を壊す」と言っていたことが実現したと言えるだろう。恐ろしい子生田絵梨花がセンターを務める「ダンケシェーン」は、自分の中では完全に凡曲であったが、「合いの手」ガイド動画によって息を吹き込まれた稀有な楽曲。WinkやCoCo風の「吐息のメソッド」は、ファンの間でそこまで人気がないのが理解に苦しむ秀作。フィリー・ソウル風のグルーヴィなリズム隊に覆いかぶさる、この透明感あるユニゾンこそ乃木坂でしょう。後半の展開がやや雑なのが少し残念。「孤独兄弟」は、珍しくギターがファンクっぽい以外はあまり特筆すべき点はない。もう少しリズムを黒っぽくすれば今までにない乃木坂の色を出せたかもしれないのだけど。「ロマンスのスタート」、こういう当たり障りないストレートな曲はやっぱり必要だろうな。でもこれを安易に表題にしないのが乃木坂のいいところだ。