幸せな結末

Happy End

Everything is Embarrassing

七尾旅人の『リトルメロディ』について話す。
現時点ですでに邦楽史に刻まれるべき名盤である。有無を言わせない、名曲しかない。七尾旅人の近作は聴いていない。とても重いという印象しかないからだ。なかなか手が出ない。しかし今作は出る前から名作の匂いがしていた。ジャケットや、タイトルや、先行曲など総合的に見てだ。そういう予感は大体当たる。外れるときもあるが。
このアルバムは"圏内の歌"で始まる。この曲は震災後、福島で歌う様子がネットに上がっていたり、青葉市子がライブでカヴァーしていたりと、耳にする機会はあった。しかしあまりピンとこなかった。というのも、あまりに具体的にすぎると思ったからだ。そういう歌は僕はあまり好きではない。イメージを特定してしまうから。僕が好きなのは、そういう震災をイメージさせつつ、もっと広くて、もっと大きなことを歌うような歌だ。そういう意味でこの曲はタイトルからして限定的だったから、あまり印象は良くなかった。
しかし、だ。ちゃんと音源を聴いてその考えが吹き飛んだ。いま僕が好きだと言ったような曲だった。すなわち、震災後のリアクションとしての曲なんだけど、それよりもっと深く、広く、優しい歌なんだと…慈愛とか、諦めとか、希望とか…そういうものが完璧に捉えられた歌なんだと気づいたんだ。本人がインタビューで、この曲を歌っていると微笑みを浮かべるような気持ちになる、と語っていたが、まさにそんなエモーショナルになる曲。正直このアルバムはこの曲だけでも十分価値があると感じた。
それ以外にも名曲の嵐だ。"サーカスナイト"、"湘南が遠くなっていく"、"七夕の人"、"Memory Lane"、"リトルメロディ"...中盤に挟まれる小品4曲も必要不可欠だと感じる。通奏低音としては、「日本の夏=少年期に抱いた憧憬」みたいなところか。アコースティックな曲が多いが、シンプルということではなく、サウンドは緻密に作られている。そしてそれを感じさせない。本当に自然に、純粋に、瑞々しい歌がここにはある。去年から音楽シーン全体、もしくは個人史観的に観ても、「歌モノ」というのが一つのキーワードだった。それを象徴するような作品がついに出たな、と思った。また、録音が素晴らしい。音がいいというのは僕にとってかなり重要なことだ。

アルバム至上主義だが、最近はシングルに魅力を感じている。TSUTAYAでシングルを中心に見ていくようになった。YUKIのニューシングルにtofubeatsがremixで参加している。原曲より好きだ。というか原曲の印象がまったく残らない。

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