Half a Person
会社の飲み会で、いまの若者たちは欲がないという話になった。僕もそうだ。欲しいものはないのかと聞かれて、すぐには思いつかなかった。ただ、(この話はしなかったけど)僕は大学・大学院と7年通ったうち、少なくとも5年間は友だちと呼べる人は一人もいなかった。そんな社会性ゼロの人間が、就職できただけでも奇跡という他ない。拾ってくれた会社には感謝している。とにかく、そんな人間だったから、会社に入って普通に他者と何か一緒に作業したり、ちょっとした頼み事をされたり、食事をするというだけでも幸せなのだ。人間関係も悪くない。そんな環境で平穏無事に一日を終えて、家に帰って好きな音楽を好きなように聴ける。それだけでいい。さらに幸運なことに、週末には愛すべき恋人と逢える。それ以上何を望むというのだろう?
みなもと
例えば中川五郎のような、ごく個人的な内容を歌にするのがシンガー・ソングライターの定義とするならば、彼女はやや種類の異なるアーティストだ。作家本人とは関係なく、独立した美しさとわかりにくさを持つ歌詞(その中に「ある特別な感情」を隠している)を書く。そういう意味で彼女は正しく「詩人」である。あるいは大衆を惹きつける力(美人かどうか判別のつきにくい特徴的な容姿)を持つポップ・シンガーか。小沢健二が憑依したような高揚感を持つファンキーな3分間ポップス「後悔」と、アリーナクラスでも耐えうる、胸いっぱいの必殺メロディが炸裂する「あなたはあなた」。この2曲が存在するだけでも2017年を代表する名盤と呼ぶに相応しい。柴田聡子『愛の休日』。
At My Most Beautiful
Lust For Life
今日のままでいることなんて
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4月の終わりに僕はポール・マッカートニーのライブを観た。16年以上(人生の半分以上だ)ビートルズを聴き続け、その音楽に身も心も捧げていた人間にとっては御姿を拝めるだけでもありがたいのに、なんとその場でビートルズの曲を演奏し、歌ってくれるのだ。個人的には「恋を抱きしめよう(We Can Work It Out)」、ジョンのパートを歌うポール、に泣けた。そう、この人こそ「ジョンの不在」をずっと背負い続けてきた人なんだ。先日藤本国彦『ビートル・アローン』を読んで、ジョンが生前ポールにかけた最期の言葉を知ってさらに泣けた。
「たまには俺のことも思い出してくれよ、オールド・フレンドなんだからさ。」
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ときに柴田聡子の新曲「後悔」がすごく好きだ。
ああ、バッティングセンターで
スウィング見て以来
実は抱きしめたくなってた
という歌詞になぜかグッと来てしまった。しかもこれが自由に上下するメロディに乗るのだから凄まじい。
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スピッツのアルバムが一斉にアナログ再発されると知ってしまった。『スピッツ』『名前をつけてやる』『ハチミツ』を注文した。値段(税抜¥3,000)が比較的良心的ですばらしい。くるりとは違う。
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来月に出るシャムキャッツの新作が吐くほど楽しみだ。ティーザーでちらっと聴いた感じは、ややラフで風通しの良さそうなネオアコ、またはパワー・ポップ(最高)。去年のシングル『マイガール』とEP『君の町にも雨はふるのかい?』で強引にバンドの新たな引き出しを開け、次作はもっと雑多な方向に行くのかと思いきや、統一感のあるテイストになりそうだ。去年の暮れに見たワンマンは、とても堂々とした貫禄あるバンドに成長したなあ、と考えていた(別に初期から追ってわけではないが)。
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今日のプレイリストは特にテーマなし。特定のアーティストにはまっていない時期です。
11 May, 2017
M1. Calvin Harris, "Heatstroke" (feat. Young Thug, Parrell Williams & Ariana Grande)
M2. Noname, "Sunny Duet" (feat. theMIND)
M3. NGT48, "青春時計"
M4. 藤原さくら, "Someday"
M5. 吉澤嘉代子, "月曜日戦争"
M6. 柴田聡子, "後悔"
M7. Girlpool, "It Gets More Blue"
M8. Mac DeMarco, "One More Love Song"
M9. The Zombies, "This Will Be Our Year"
M10. Radiohead, "High and Dry"
M11. Radiohead, "No Surprises"
M12. R.E.M., "Nightswimming"
M13. cero, "街の報せ"
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近いうちに中村一義『金字塔』について書きたい。