幸せな結末

Happy End

今日も朝から夜だった

やはりロックンロールが好きだ。年が明けてからヨ・ラ・テンゴやヴェルヴェット・アンダーグラウンドギャラクシー500やらの音楽が特に身体に入ってきやすいのだけど、これらの音楽に通底している温度感がなんだか好きなんだ。気怠くて、ややひんやりしている空気感。というかヴェルヴェッツの影響下にあるバンドは大抵好きだ。『ローデッド』はおよそ考えうる完璧なロックンロール・アルバムのひとつ。2~3分のポップ・ソングと長尺のロック・ソングが何の違和感もなく共存しているからだ。それぞれの曲にそれぞれの必要な時間があって、それらが自然と与えられている(「フロム・ミー・トゥー・ユー」は2分いらないし、「ヘイ・ジュード」は7分必要、というように)。他にはディアハンター『ハルシオン・ダイジェスト』、最近だとエンジェル・オルセン『マイ・ウーマン』などがありますよ。

今日はセンター試験の日だったそうで、その昔僕は2年連続で受けた記憶がある(1回目はもう10年前だが、信じないことにする)。だがもう関係のない話だ。12時半に目が覚めて、2時間ぐらいiPodのプレイリスト(2010年代のベストトラックを集めたもの)から適当に曲を流してぼんやりしていた。なんとも無益で無害な最高の時間。飽きた頃にベッドから這い出て、車でミツメをかけながらココイチに行く。チキンカツカレーを頼んで食べていたら、天啓があって、ライスは200gで十分という驚くべき結論に達した。これは論文が書けると思う。もしかしたらノーベル賞に手が届くやもしれない。やも。

その後、一番近いヴィレッジ・ヴァンガードに行って、にわか漫画ファンとして暗躍すべく、恋人に薦められた宮崎夏次系の短編集を2冊購入した。まず『変身のニュース』を読んだのだが、ごく控えめに言って、とてつもない衝撃を受けた。宮崎夏次系という才能そのものがごろりと横たわっていた。たまたま漫画という体裁をとっただけの話。

つい先日は石山さやか『サザンウィンドウ・サザンドア』を読んだ。これも大変よかった。ひとつの団地に暮らす様々な人々の群像劇。街中でつづいていく暮らし。例えば星野源『エピソード』(もう今の彼にはこうした作品はつくれないのだろうと思うとやや寂しい)やシャムキャッツ『AFTER HOURS』といった、市井の人々を並列に描いた作品は基本的に好き。

本当は『ジャニス リトル・ガール・ブルー』を観に行こうと思っていたのだが気が乗らずやめる。帰ってカーネーションの『天国と地獄』、『EDO RIVER』をApple Musicで聴く。カーネーションは今まで通ってこなかったが、ミュージシャンズ・ミュージシャンという印象が非常に強かったのできっといいのだろうと予測していた。『天国と地獄』はマジモンのロック・アルバムで、久々にアルバム通して聴く行為にゾクゾクした。『EDO RIVER』のタイトル曲にもぶっ飛ばされた。

去年の春に買ったサックスブルージャックパーセルがなぜかすごく汚いので、ブラックの新しいやつが欲しい。でもあの靴は薄めの生地でつくられているので今の時期は寒いです。

Resurrection

マイ・フェイバリット・シングス・2016

Albums (2016)

Angel Olsen『My Woman』
Beyoncé『Lemonade』
Bruno Mars『24K Magic』
Chance the Rapper『Coloring Book』
Frank Ocean『Blonde』
Kanye West『The Life of Pablo』
Pictured Resort『All Vacation Long』
SMAPSMAP 25 YEARS』
大森靖子『TOKYO BLACK HOLE』
サニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』
ラブリーサマーちゃん『LSC』

Tracks

Kanye West「No More Parties in L.A.」
Radiohead「Daydreaming」
The Weeknd「I Feel It Coming」
欅坂46サイレントマジョリティー」「二人セゾン」
サニーデイ・サービス「セツナ」
シャムキャッツマイガール

Albums (-2015)

aiko『夏服』(2001)
Big Star『Radio City』(1974)
Boz Scaggs『Silk Degrees』(1976)
Kendrick Lamar『To Pimp a Butterfly』(2015)
Marcos Valle『Samba'68』(1968)
Michael Jackson『Off the Wall』(1979)
Prince『Dirty Mind』(1980)
A Tribe Called Quest『The Low End Theory』(1991)
斉藤由貴『LOVE』(1991)
森田童子『ぼくたちの失敗 ~森田童子ベストコレクション~』(2003)

Movies

レオス・カラックスポンヌフの恋人』(1991)
アブデラティフ・ケシシュアデル、ブルーは熱い色』(2013)
ウォン・カーウァイ恋する惑星』(1994)
トッド・ヘインズ『キャロル』(2015)
リチャード・リンクレイター『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995)
橋口亮輔『恋人たち』(2015)
岩井俊二リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016)
バイロン・ハワード『ズートピア』(2016)
庵野秀明樋口真嗣シン・ゴジラ』(2016)
ジョン・クローリー『ブルックリン』(2015)
ロン・ハワードザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years』(2016)
山戸結希『溺れるナイフ』(2016)
片渕須直この世界の片隅に』(2016)

Books

田中康夫『なんとなく、クリスタル』(1980)
金澤寿和『Light Mellow 和モノ Special -more 160 items-』(2013)
松本隆『風のくわるてつと』(1972)
『&Premium 28 映画が教えてくれること。』(2016)
宮沢賢治銀河鉄道の夜』(1969)
寺山修司寺山修司少女詩集』(1981)
村上春樹 編訳『恋しくて Ten Selected Love Stories』(2013)

Media

TBSラジオ『Sound Avenue 905 (DJ:小西康陽)』
テレビ東京『欅って、書けない?』
テレビ東京『乃木坂工事中』

Live

cero『~Outdoors~』(@日比谷野外大音楽堂 20160521)
小沢健二『魔法的 Gターr ベasス Dラms キーeyズ』(@Zepp Tokyo 20160525)
サニーデイ・サービスサニーデイ・サービス TOUR 2016』(@恵比寿リキッドルーム 20161215)

Others

Apple Music
Hulu
Filmarks
Pairy
はてなブログ
ねこだんご トラ

I Feel It Coming

欅坂46のニュー・シングル「二人セゾン」は曲、MVともに傑作である。まず触れるべきは画期的なフォーメーションで、1st、2ndで3列目のポジションに甘んじていたメンバーがなんと4人(小池美波、原田葵、佐藤詩織、齋藤冬優花)も、1列目に躍り出たのだ。きっと何かのギミックがあるのではと思ってMVを観たら、なんてことはない、ちゃんと彼女たちは1列目だった。それは映っている時間が長いという意味だけではない。彼女たちはフロントに相応しいだけの輝きをしっかりと放っていて、僕はそこに感動して思わず泣いてしまうほどだった。君はAメロで颯爽と歩いてくる小池美波のあまりの可憐さを見ただろうか。それに続く佐藤詩織のしなやかな手足と澄んだ表情を見た瞬間、あるいは、3列目でグループを支えてきた齋藤冬優花のあまりに美しい視線を見た瞬間、この冒険的なフォーメーションが完璧な成功を収めたと確信するに違いない。2列目に入ったメンバーは、黄金の中盤とも言うべき安定したパフォーマンスを見せ、特にゆいちゃんず(小林由依、今泉佑唯)が揃ってカバンを放り投げる美しいシーンを撮るだけでどれだけの犠牲が払われたか。何人を不幸にしてきたか。しかし3列目のメンバーも少ない出番ながら、そのまばたきの瞬間、魔法をかけていく。特に米さん(米谷奈々未)だ。この子の笑顔は、すごい。説明できない何か、とにかくそれはアイドルにとってとても大切な何か、が宿っている。恒常的に涙目になるMVだが、僕はこの米さんの笑顔に一番やられた。デビュー曲「サイレントマジョリティー」では、平手友梨奈とその他、という構図が明らかだった。それが今作はちゃんと欅坂46になっている。全員がすごい勢いで成長していて、それでも平手はやはり群を抜いているが、確実に差は縮まっている。

曲単体でも素晴らしい。インパクトこそ「サイレントマジョリティー」に譲るが、主張の激しくないストリングス、細やかなピアノのフレーズといったディテールを積み重ねていくアレンジの丁寧さが、最高のポップスに仕上げている。奇を衒わなくともポップ・ソングはつくれるのだ。ユーミンのような、誰も思いつけそうもないのにキャッチーなメロディ(特にBメロ)、最初から最後まで息もつかせぬ展開(しかし息苦しくない)含め、全てが完璧だと思う。

今年の音楽をまとめて近日中に書こうと思う。とにかく最近はマイケル・ジャクソンの『スリラー』が良くて、今年の初めには『オフ・ザ・ウォール』を聴き倒していた自分としては、マイケルに始まりマイケルに終わる2016年だったといえる。その間にマルコス・ヴァーリ、ア・トライブ・コールド・クエスト、森田童子、プリンス、斉藤由貴ボズ・スキャッグスがいたのだけれど。

 

天国はまだ遠い

真夜中の中枢で独りを感じるのは久々な気がする。いつものようにテレビは消して、かかり続ける音楽にただ耳を傾ける優雅なひととき。するするっと深いところに入っていこう。

卒業・引退を発表した橋本奈々未についての話。ななみんに対しての個人的な感情は、やや複雑なのだ。例えば他のメンバーに対して持つような、微笑ましいというか、純粋に可愛いと思える気持ちをうまく持てない。なんというか、嫉妬にも似たややこしい感情。たぶんななみんは、いろいろとずるいのだ。例えば、冷静な観察眼とものごとを客観視できる視点、言葉のチョイス、音楽の趣味、出自、高貴でクールな佇まいに反するような絶妙なポンコツ感…。僕がアイドルをやっていたら絶対このポジションに憧れていただろう。そういうわけでななみんを見ると複雑な気持ちになってくる。

ななみんセンターのシングル、まだ1回しか聴いてないや。ソロの「ないものねだり」はいい曲だけど。

そういえば乃木坂46を認識した時、生駒ちゃんと同時に記憶したのがななみんの顔だったな。たしか携帯のCMだった。不思議な顔だな、というのが第一印象だ。

それにしても、ななみんクラスの人気メンバーがまだ結構いることはいいことではあるが考えものでもある。すなわち1人につき「卒業発表→卒業」という工程を約半年程度とるとして、その期間が被らないようにすると、生駒、白石、生田、西野だけでも2年かかる。さらに飛鳥、松村、桜井、若月、高山、秋元、星野、井上、◯、、、3期生を採ったと言うのに「卒業工程」で結構時間が犠牲になる。うーん。

 

ラブリーサマーちゃんのメジャー・ファースト・フル・アルバムがすごくいい。なんとなくガールズのファーストが想起されたりした。90sUSインディとシューゲイザーブリットポップ日本語ラップとフォークと邦楽ロック(チャットモンチー~相対性理論のライン)が並列に並んでいる感覚。青一色のジャケットも最高(『スリーアウトチェンジ』『TEAM ROCK』『100s』の系譜!)。

 

山戸結希『溺れるナイフ』を観た。傑作だった。菅田将暉は言うことないし小松菜奈の死んだ目もよかったし、さらにジャニーズの子と上白石萌音という子も好演っぷりが素晴らしかった。山戸結希監督ってよく鬼才とか言われてて、それって「よくわかんないけどなんかすごい」領域から出れてないんじゃないかと、個人的には疑いの目で観てたのだけど(例えば西野七瀬ソロ曲のMVなどで)、今回の映画は感情的に刺さってきた。天才だと思った。ラスト・シーンでは涙がひとすじ流れてきた。

 

明日は『シング・ストリート』を観るのでこの辺で寝るとしよう。